今年から都市史という講義を担当していて、ローマという都市を巡る背景を確認しておきたいので、彼女の著作を読みはじめたが、これが面白い。最初は知識をインプットするような斜め読みをしていたが、ついついはまりこんでしまった。
彼女はローマという都市国家がなぜ千年も持続したのかという点に焦点をあてて、ローマの特質をつぎつぎと指摘していく。特にアテネ、スパルタ、カルタゴといった周辺の列強国との体質の違いによって、ローマがなぜ生き延びたのかという理由をあげていく。これらの国々は一時的にはローマよりも繁栄するが、ローマほど長くその繁栄を維持することはできず、没落の末路を辿る。その違いはなんなのかという興味に沿ってストーリーが展開していく。
何度も危機を迎えながら、その度に改革を実施していく様子は日本のこれからを考えるうえで参考になると彼女は指摘する。歴史を学ぶ醍醐味はここにある。未来を構想するうえで、国が滅びた理由、国が栄えた理由を知っておくことは極めて重要だと思う。
彼女はローマ人は器用な人間ではないという。カエサルなどの英雄が強調さがちなのがローマの歴史だが、実はそこにローマの本質はないという。無名の多くの人による組織的かつ持続的な改革の姿勢がローマを歴史上まれに見る繁栄を築いたという。組織のローマである。
政治体制や税制、経済、産業から軍事、国土計画に至るまで縦横無尽に話が展開しつつも分かり易く、かつ現代社会の抱える問題にも通じながら語る文章は新鮮で飽きない。
こうしたローマの変遷を分かり易く理解すると、ローマの市街地空間の変容も事実として知っているというレベルから、なぜそうなったのかということまで思い浮かんでくるようになる面白さがある。都市史を学びたい人にはオススメの副読書だ。
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