2010年2月27日土曜日

アントレプレナー

昨夜、帰宅後浅田真央さんのフィギュアスケートの録画を観たあと、何気なくテレビを見ていたら朝まで生テレビをやっていた。意外と好きなんです。この番組。テーマは凋落日本と若手起業家の成長戦略というもので、各界で活躍する若手起業家が出演してました。ホリエモンこと堀江貴文さんも出演してました。
このテレビの話題で思い出したのが前職の先輩がよく言っていたアントレプレナーという言葉。大学卒業後創業間もないシンクタンクに勤めたのだが、これが良く言えば自由な会社で、悪くいえばいいかげんな会社であった。会社ができて数年しかたっていないので、何かをやろうとしても前例もなければ、仕組みもない。そういう白紙の場所だった。仕事も会社が与えてくれるわけでもなく、自分のやりたい仕事をとってきなさいといういいかげんな感じだった。大学卒業間もない私は大いに面くらったわけだけれど、別に内定をもらっていた某大手シンクタンクではなく、(当時は新興の)シンクタンクに入ったのは、やはり新しいなにかがあるのではという期待感だった。とはいえ、なにもない職場だったので、若手社員(ほとんどが若手なんですが)は色々と憤ることも多かった。未熟な自分に対するふがいなさや、将来に対する不安もあったように思う。
そんなとき、前述の先輩は飄々としていたのが印象的だった。聞いてみると彼はこのシンクタンクに入った時から将来独立するつもりだったし、自分に実力をつけ、鍛える場所としてシンクタンクを選んだので、過酷な環境で自分を鍛えられることはむしろ幸せだ。仕事がなくて困っている会社、社員が多い中で、いくら仕事をやっても仕事がなくならないことはむしろ幸せだと語っていた。アントレプレナーを目指す人にはシンクタンクは最適の道場だと彼は言っていた。多くの人との出会いもある職業でもあるし、確かにそうだと思った。
都市デザインや都市計画という分野での現状の行き詰まりや閉塞感をなんとか打破したいという思いもあって、ゼネコンや設計事務所といった既定路線の職場を選ばなかった私としては、この先輩のアントレプレナーたれという姿勢に大いに刺激を受けた。その後、自分の目指す道を突き詰めるために研究に取り組み、博士論文も書いたし、大学への転職もした。
結果的には公立大学の教員という(外からみれば)安定した職場に収まったわけだけれど、当時研究者になるという選択は将来のアテもない大ばくちだったと思う。周りにも大変心配もかけた。しかし、いずれにしてもいまの自分があるのは、前職場での刺激が大いに影響している。
朝まで生テレビを見ていると16〜7年ほど前のそんな思い出が甦ってきた。
この起業家の面々にはリクルート出身者が非常に多いということも話題になっていた。金曜日の昼にお会いしていたケイオスの澤田さんもリクルート出身。私の大学の後輩でもリクルート出身者は多い。そして、この人たちは皆このうえなく魅力的だ。前向きだし、新しいことを自然に受け入れてくれるし、なにより仕事を楽しめる能力を持っている。確かにリクルートという会社は日本を救う一つの鍵を持っているような気がする。
かねてから都市計画、都市デザインという分野は閉塞感や行き詰まりの雰囲気が充満している反面、大いに可能性がある領域だと思う。都市のバイタリティが問われるいま、この分野に期待される側面は非常に大きいと思う。ただ、今までのやり方、今までのモデルではない新しいなにかを構築しないといけないのも確かだ。それは新しい公共であり、新しい空間概念であり、新しいエリアマネジメントであり、新しいコミュニティといったことだろう。そして、そのことは新しいビジネスモデルをつくることに他ならない。確かに旧来業種の会社は皆苦労しているが、その一方で澤田充さんや永田宏和さん、山崎亮さん、忽那裕樹さん、杉本容子さん、山本一馬さんなど新しいビジネスモデルに強みを持った起業家たちはとても元気だ。社会からも注目されている。
市大の学生もどんどん起業するという野心をもって、社会に巣立って欲しい。まちづくりをビジネス化する新しいモデルを構築するという目標をもって。

ちなみに、前述した私の将来に大きな影響を与えた先輩はスピンアウトすることもなく、いまもシンクタンクに勤めている。しかも優良社員で幹部になっている。クライアントも中央省庁中心で比較的安定した受注環境にある様子。ちょっとズルいと思わなくもないが、人生とはそんなものかなと思う。

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